ピアノ演奏専用の靴

足にぴったりフィット、 ペダリングの不安も解消!

コンサートやコンクールで演奏する際は、音楽のみに集中したい。しかし本番では様々な心配事があり、その一つにペダリング=靴の問題がある。そこで誕生したのが、世界初のピアノ演奏用の靴『リトルピアニスト』。「ペダルを踏むときにヒールが滑らない!」「足にストレスがかからない!」と評判が評判を呼んで、今では学生からプロまで愛用者が増えている。そこでこのたび、「こんな安心感はない!普段でも履きたいくらい」と言うピアニストの高橋多佳子さんと、考案者でリトルピアニスト代表・倉知真由美さんに音楽の友ホールにお越しいただいた。

取材・文=上田弘子 Text=Hiroko Ueda
写真=武藤 章 Photo =Akira Muto
※「音楽の友」2017年1月号より転載

リトルピアニストの誕生

高橋「コンサート用のドレスは選べるけれど、靴って意外と選択肢がないのですよね。私は足の甲が薄いので、ヒールが高いと歩くときに踵が抜けてしまうのです。なので、ベルト付きじゃないと駄目。そして皆さん一致している心配事が、ペダルを踏むときに踵がズルッと滑ること」

倉知 「それが『リトルピアニスト』誕生のきっかけなのです。娘がピアノを習っていて、ペダルを踏むときに四苦八苦していたので」

元々ゲームクリエイターで音楽とは無縁だった倉知さん。「演奏用の専門の靴があるとばかり思っていた」ところ、「そういう靴はないと分かり、それなら作ろう」と。既成靴を自ら改良するところから始まり、やはり靴専門の方に作ってもらおうと、先ずは特許取得へ。

倉知 「特許取得も大変でしたが、靴のメーカー決定までに100社ほど当たりました。メールは返信なし。電話、けんもほろろ。会社訪問や展示会にも行きました。踵の湾曲が特許の一つなのですが、靴屋さんにしたら『そんな形は靴ではない。ペダルは重要なの?』と。それで自宅に来ていただいて、実際にペダルを体感してもらいました」

既成靴の場合、ヒールの太さの差はあっても、ペダルを踏むときにはヒールと床の接地面は"点"になる。それが滑る原因で、『リトルピアニスト』はヒールの後部形状が湾曲で、その部分に柔らかいゴムを貼っているから支点が"面"になり安定感がある。高橋さんは、5センチメートルヒールの新しい3Wayモデルのピアノシューズを着用。

高橋「履いた瞬間、足が靴に包まれる感じで、それでいて靴の中で足の指が自由に動かせるので、繊細なペダリングも自在に行えます。私はベルトを付けますが、足首用、甲用、もしくはベルトなしと、3Way(スリーウェイ)が可能というのも有難いです」(下記参照)

試作の3Wayタイプ(アンクルストラップ)を履く高橋さん。 高橋さんは、4月23日にデビュー25周年記念コンサートを行う

試作の3Wayタイプ(アンクルストラップ)を履く高橋さん。
高橋さんは、2017年4月23日にデビュー25周年記念コンサートを行う

筆者も体験

そして高橋さんに、実際にピアノを弾いていただいた。ドビュッシー《月の光》では、何段階もの細かいペダルを踏む際、靴(足)とペダルが一体化しているよう。ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」では、パワフルなペダルの際にもヒール(踵)が安定していて、踏ん張る左足も自由で居られる(甲の部分が柔らかく曲がる)。

筆者も履かせていただいたのだが、こんなに足に優しい靴は生まれて初めて! 圧迫感ゼロで足に完全フィット。それでいて(靴を履いているのに)、イメージするペダリングが脳からペダルまで直結直行。
思えば、なぜ今までアスリートのように「専門の靴」がなかったのか不思議だ。画期的な、そして母の思いが詰まった『リトルピアニスト』。今後は男性用の靴も予定ありとのこと。

ラフマニノフ「ピアノ協奏曲」の演奏時の 足元。左足に注目!

ラフマニノフ「ピアノ協奏曲」の演奏時の足元。 左足に注目!

 

高橋多佳子さんの意見も取り入れた 3Wayタイプ
( オントモ・ヴィレッジにて2017年2月下旬から独占販売予定)
   

1.プレーン
 
2.足の甲ストラップ
 
3.アンクルストラップ

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〈プロフィール〉 ピアニスト 高橋多佳子 Takako Takahashi

桐朋学園大学音楽学部卒業後、国立ワルシャワ・ショパン音楽院大学院研究科を最優秀で修了。

1990年第12回ショパン国際ピアノ・コンクール第5位入賞。ポルト国際コンクール(ポルトガル)第2位及び現代音楽最優秀演奏賞、ラジヴィーウ国際コンクール(ポーランド)第1位、第22回日本ショパン協会賞受賞など、内外で輝かしい受賞歴を重ねる。ソロ・リサイタルやオーケストラとの共演など、演奏活動は日本とポーランドを拠点にほぼ全ヨーロッパに及ぶ。

全18タイトルのCDをリリースしており、中でもショパンの作品を時代ごとに取り上げた《ショパンの旅路》(全6タイトル)、ロシアの2大作品をカップリングした《ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番&ムソルグスキー:展覧会の絵》、《リサイタル「ショパン with フレンズ」?奇跡の年?》(いずれもオクタヴィア・レコード)は、“レコード芸術誌特選盤”に選ばれた。

2006年からはソロ活動に加え、宮谷理香とのピアノデュオ・ユニット「Duo Grace」を結成。11年5月に発表したCD《グレイス》、14年3月リリースのCD《ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ》は共に“レコード芸術誌特選盤”に選ばれた。

10年1月からは《茂木大輔の生で聴く「のだめカンタービレ」の音楽会》全国ツアーに参加。同年3月より、浜離宮朝日ホールにおいて全4回にわたる《ショパン with フレンズ》?奇跡の年?シリーズを開催、各会ともに優れた企画と高い音楽性で絶賛を博した。

14年10月からは、主要ソナタをプログラムの中心に据えた自主企画シリーズ《名曲達の饗宴》を開催するなど、ますます意欲的な活動で大きな注目を集めている。現在、桐朋学園大学非常勤講師。

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リトルピアニスト https://littlepianist.jp/
 
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